かもめ

【おでかけ】
こんばんは。
久々に紙で指を切ってしまった自分です。
経験者ならわかる。
この鋭い痛みは地獄です。



少し前に上げた寺山修司記念館の記事の番外編です。
画像多目です。
そして5年ぶりに真面目なことを書きます。



記念館を訪れた際,近くの森の中に寺山修司文学碑なるものがあると知ったため,ついでに行ってみることにしました。

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記念館からは50mくらいの場所に案内板がありました。
とにかく周りが静かすぎて不気味な雰囲気です。

矢印に従って足を踏み出してみると,眼前には緩やかな勾配を持つ山道が伸びています。
少し霧が出てきたのでせうか。
広がる風景は,形を留めつつモノクロームのような存在感の薄さを漂わせています。
幻想的なだまし絵に自分も取り込まれてしまうような錯覚さえ覚えます。
松林の向こうには,うっすらと陽光を反射している小川原湖が見えました。

ふわふわとした気持ちが断ち切られるかのように,唐突に開けた場所に出ました。
そこにひっそりと文学碑が建てられていました。

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本の上に飛行機。
その前に佇む犬。
その本には在りし日の寺山氏の短歌が記されています。

君のため一つの声とわれならん失いし日を歌わんために

一粒の向日葵の種まきしのみに荒野を我の処女地と呼びき

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

寺山氏の命日である5月4日には,この場所で献花・朗読会などがおこなわれるそうです。
しかし今はそのような喧騒とはまったく無縁な静の空間です。


この文学碑にたどりつくまでの道中,および文学碑を過ぎてなお奥へと続く小道には,丸太でできた歌碑が建てられています。
寺山氏の歌が刻まれた歌碑。
それは恰も訪れる人をいざなう道標のようでした。


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ほどかれて少女の髪にむすばれし葬儀の花の花ことばかな


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生命線ひそかに変へむためにわが抽出しにある一本の釘


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吸ひさしの煙草で北を指すときの北暗ければ望郷ならず


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秋菜漬ける母のうしろの暗がりにハイネ売りきし手を垂れており


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海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり


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駈けてきてふいにとまればわれをこえてゆく風たちの時を呼ぶこえ


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売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき


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とんびの子泣けよとやまのかねたたき姥捨以前の母眠らしむ


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一本の樫の木やさしそのなかに血は立ったまま眠れるものを


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ふるさとの訛なくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし


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森駈けてきてほてりたるわが頬をうずめんとするに紫陽花くらし


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すでに亡き父への葉書一枚もち冬田を越えて来し郵便夫


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人生はただ一問の質問にすぎぬと書けば二月のかもめ


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きみが歌うクロッカスの歌も新しき家具の一つに数えんとする


最後の歌碑を過ぎてまもなくすると,先ほどの入り口に戻ってきました。
ちょうど文学碑を円周の対極として,一回りしてきたようです。

すべてが現実離れした感覚を持った一方で,寺山氏の遺した短歌は鮮烈に脳裏に焼きついています。

自身の出生さえも虚構のうちに沈めた天才歌人。
現実と虚構の境界線は各々の内に。

あの山道への入り口がその境界線だったとしたなら,自分はこの数瞬まぎれもなく寺山氏の作品の登場人物だったのでありませう。

願わくばその役割が二月のかもめであらんことを-



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